薬を飲ませた方がいいのかな。でも、なんか怖い。
発達障害の子を育てていると、一度はそう思う日が来るのではないでしょうか。
わたしは薬についてかなり強い否定派でした。それでも、ぽんたに自傷が出始めたとき、初めて本気で向き合うことになりました。
エビリファイを飲み始めてから、ぽんたのかんしゃくは1日4〜5回から、1日1回あるかないかまで減りました。
この記事は薬をすすめるものではありません。迷って決めた母親としての実感と、歯科衛生士として薬と口の関係を見てきた立場の両方から、飲む前の不安・飲んだあとの変化・副作用を書きます。読み終わるころには、主治医に何を聞けばいいかが見えているはずです。減薬を試した今の状態まで、最後に書き足しました。
この記事は保護者としての個人の体験談です。医療情報の提供や特定の薬の服用をすすめるものではありません。効果や副作用の現れ方には個人差があります。薬については必ず主治医にご相談のうえ、指示に従ってください。
自閉症の自傷が出始めたころ|かんしゃくの激しさが変わった
ぽんたには小さい頃からかんしゃくがありました。でも、ある時期からその激しさが変わってきました。
かんしゃくを起こすと、泣きながら自分の顔を叩く。壁に頭をぶつけようとする。自分の腕を噛む。
最初に見たとき、心臓が止まりそうでした。これが自傷行為なのかと思い、焦って止めようとすればするほど激しくなって、どうすればいいかわからなくて、一緒に泣いていた日もありました。
薬を飲ませたくなかった2つの理由

うちも薬をすすめられたけど、どうしても踏み切れなくて…

わたしもそうでした。しばらく先生の話をはぐらかしていたくらいです。
自傷が出てきたころから、薬という選択肢が頭をちらつくようになっていました。でも、どうしても踏み出せなかった。
理由はふたつあります。
ひとつは、単純に怖かったから。薬はぼーっとさせるもの、というイメージが強くて。昔見た映画のロボトミー手術後の場面が頭から離れず、ぽんたがぽんたじゃなくなるんじゃないかと思っていました。
もうひとつは、ありのままのぽんたを育てたかったから。薬でかんしゃくをコントロールするなんて、かわいそうじゃないか。この子の感情を薬で抑えるのは、親としてどうなんだろう。夜、眠っているぽんたの顔を見ながら、何度も同じところをぐるぐる考えていました。
エビリファイを飲むと決めたきっかけ|主治医の一言
ある日、学校の先生から「支援学校では、薬を飲んでいるお子さんは少なくないですよ」と教えてもらいました。飲ませてくださいと直接言われたわけではありません。でも、ぽんたにも必要なんじゃないかと、遠回しに伝えてくれていたんだと思います。
その後、主治医に相談しました。先生の答えはシンプルでした。
「自傷行為が出たら、飲み始めるタイミングです。」
それを聞いて、何かがストンと落ちた気がしました。ぽんたの感情を抑えるための薬じゃない。ぽんたを自傷から守るための薬なんだと。
エビリファイの効果|かんしゃくの回数と時間はこう変わった
エビリファイを飲み始めてから、かんしゃくの回数が劇的に減りました。飲む前は1日に4〜5回、1回のかんしゃくが収まるまで30分ほどかかることもありました。それが今は、1日1回あるかないか、切り替えも10分ほどでできるようになりました。
学校でも、デイでも、最近落ち着いていますねと言われるようになりました。あんなに毎日激しかったかんしゃくが、こんなに変わるものなのかと、本当に驚きました。
学校では、かんしゃくが起きると落ち着くまで個室に移動していました。その間は授業を受けられないので、学習の機会を失ってしまっていました。かんしゃくが減ったことで、ぽんたがちゃんと授業に参加できる時間が増えたのも、大きな変化のひとつです。
わたし自身も変わりました。かんしゃくが続く日々は、こちらも余裕がなくなって、ぽんたに怒ってしまうことがありました。でも今は、そういう場面がずっと減って、ふたりで穏やかに過ごせる時間が増えました。
薬を飲む前、わたしはぽんたをコントロールしようとしているのではないかという罪悪感を、ずっと抱えていました。でも、かんしゃくが減ったぽんたを見て、気づいたことがあります。
あのかんしゃくは、ぽんた自身も苦しかったんじゃないか。薬は感情を消したんじゃなくて、ぽんたが自分の気持ちをうまく扱えるように助けてくれているのかもしれない、と。
エビリファイの副作用|眠気・体重増加、そして口の渇き

効果があったのはわかったけど、副作用は大丈夫だったんですか?

ふたつ出ています。いいことだけ書くのはフェアじゃないので、全部お伝えしますね。
飲み始めてから、眠そうにしている時間が増えました。しんどそうだなと思う日もあって、それは今も少し気になっています。
それから、食欲がかなり増えて、体重がだいぶ増えました。食事の管理に気をつかうようになりましたが、ぽんたには偏食があるので、食べられるものを減らさずにどう整えるかで今も悩んでいます。食卓での工夫はこちらに書きました。

もうひとつ、わたしが仕事柄いちばん気にしているのが口の渇きです。
神経に働きかけるタイプの薬では、唾液が出にくくなることがあると日本歯科医師会も説明しています。唾液は口の中を洗い流して、酸をうすめてくれる存在です。それが減れば、虫歯や歯周病のリスクは上がります。振り返れば、ぽんたにもやたらと水をほしがる時期がありました。
今は、朝起きたときに唇や舌が乾いていないかを見るようになりました。うがいができないので、歯みがき粉もフッ素入りで塗ったままにできるタイプに替えています。診察のときに口の中の様子も伝えるようにしたのは、薬を始めてからの習慣です。
薬と虫歯の関係、うがいができない子の歯みがきについては、それぞれこちらにまとめました。


今も、正解かどうかはわからない
薬を飲ませて正解だったのかと聞かれたら、今もまだわかりません。
ありのままのぽんたを育てたかった気持ちは、今もあります。副作用のことを考えると、複雑な気持ちになる日もあります。
でも、自傷が減って、ぽんたが穏やかに過ごせる時間が増えたのは事実です。あの自傷を毎日見ていたころのわたしと比べたら、今はずっと楽です。
薬を選ぶことも、選ばないことも、どちらも正解だと思います。大事なのは、怖いからと目を背けずに、主治医と話して、自分で決めること。今はそう思っています。
その後|体重を減らすために薬を減らしてみた
ここから先はこの記事を書いたあとの話です。
増えた体重がどうしても気になっていました。主治医に相談のうえ、薬の量を一時的に減らしてみることになりました。副作用とはいえ、このまま増え続けるのを見ているのはつらい。減らせるなら減らしたい。そう思っての判断でした。
結果から書きます。かんしゃくが戻ってきました。
回数が増えただけではありません。ひとつひとつが激しくて、切り替えにも時間がかかる。家の中がまた張りつめて、わたしもぽんたも消耗しています。飲み始める前に近い状態です。
結局は量を元に戻しました。今はむしろあのころより多い量を飲んでいます。体重も減るどころか当時より増えました。
減らしたくて減らしたのに、戻ってきたのはかんしゃくのほうでした。振り出しに戻るどころか少し後ろに下がった気がしています。
減らしてみてはっきりわかったことがあります。
かんしゃくが減っていたのは、時間が経って落ち着いたからでも、ぽんたが成長したからでもありませんでした。薬がちゃんと働いていた。それだけのことだったんだと、減らして初めて知りました。効いているときは、効いていることが見えないんだなと思います。
今は体重とかんしゃくのどちらを取るかという話になっています。どちらも取りたいのに片方を選ばされている感じがします。この先どうするかは、また主治医と相談しながら決めていきます。
もし今から同じことをするなら、と考えることがあります。学校が落ち着いている時期を選ぶ。減らす前と後でかんしゃくの回数と時間をメモしておく。変化が出たら次の受診を待たずに連絡する。減らすのは前に進むことのように感じるけれど、子どもにとっては環境が変わるのと同じくらい大きなことでした。
この記事の前半だけを読んで、飲ませればうまくいくと受け取った方がいるかもしれません。そこは受け取り直してほしいと思っています。薬は魔法ではありません。合う量を探し続ける作業です。うまくいっている時期も崩れる時期もある。わが家は今、その崩れているところにいます。
よくある疑問|主治医に聞く前に知っておきたいこと
何歳から飲めるの?
エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)は、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性への使用が国内で承認されています。国立障害者リハビリテーションセンターの資料では、この目的で使う場合は原則として6歳以上18歳未満の患者に使用することとされています。
どのくらいで効いてくるの?
ぽんたの場合は、飲み始めてしばらく経ってから変化を感じました。ただ、効き方も必要な量も一人ひとり違います。少ない量から始めて様子を見ながら調整していくのが基本なので、焦らずに経過を主治医と共有してください。
ずっと飲み続けることになるの?
ここはわたしにもわかりません。ぽんたもこの先どうするかは決めていません。ひとつだけ言えるのは、自己判断で減らしたり止めたりするのがいちばん危ないということです。
副作用が出たらどうする?
眠気が強い、体重が急に増えた、体の動きがぎこちない。気になることがあれば、次の受診を待たずに連絡してください。いつ・どんなときに気づいたかをメモしておくと、診察で伝えやすくなります。
まとめ
- ぽんたに自傷行為が出たことをきっかけに、エビリファイを飲み始めた
- もともと否定派だったが、自傷から守るためと考えたら決断できた
- かんしゃくが劇的に減った(飲む前:1日4〜5回・1回30分 → 今:1日1回以下・10分ほど)
- 学校での個室移動が減り、ぽんたが授業に参加できる時間が増えた
- わたし自身もぽんたに怒る回数が減り、穏やかに過ごせるようになった
- 副作用(眠気・体重増加・口の渇き)もあるので、主治医とよく相談することが大事
- 体重のために主治医と相談して減薬したら、かんしゃくが戻って量を戻した。体重も当時より増えている
- 今も正解かはわからないけれど、あのころより確実に楽になった
もっと早く決断していたら、と思うこともあります。でも、あの葛藤があったから、ぽんたの変化を心から喜べた気もします。今はまた揺れているところにいます。答えが出たわけでもありません。それでも一度は穏やかな時間があったことを知っているので、また探していけると思っています。同じ迷いの中にいるあなたが、迷ったぶんだけ納得して決められますように。
夜のかんしゃくや夜驚症に悩んでいる方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。

親が休む時間をつくるのも大切です。放課後デイに助けられているわが家の話はこちら。

この記事は、保護者としての体験と、歯科衛生士としての知識をもとに書いた個人の記録です。診断や治療に代わるものではなく、特定の薬をすすめるものでもありません。効果や副作用の現れ方には個人差があります。薬の開始・変更・中止は、必ず主治医とご相談のうえ決めてください。

