せっかく作ったごはんにほとんど手をつけてもらえない。そんな夕食が続くと心がすり減りますよね。栄養は足りているのか不安になりますし、自分の料理のせいかなと感じている方もいるかもしれません。
わたしは重度知的障害・自閉症の息子ぽんたを育てるシングルマザーで、職業は歯科衛生士です。ぽんたの偏食に長く付き合うなかでたどり着いた結論はひとつ。偏食は「なおす」ものではなく「食べられる形に寄せる」ものです。
この記事ではそう考える理由と、わが家の寄せ方の実例をまとめます。
結論:苦手をなくそうとしない
自閉症の子の偏食には、味・におい・食感を人より強く感じる感覚過敏が関係していることが多いといわれています。本人は嫌いだから残しているのではなく、感覚的に受けつけられない。つまり料理の腕や工夫不足の問題ではないんです。
だから苦手をなくすことを目標にすると親も子も苦しくなります。苦手はそのままでいい。食べられる形に寄せていく。わが家はこの方向で食卓がだいぶ平和になりました。
ちなみにぽんたの偏食は育児書どおりではありません。子どもの定番メニューにあまり興味を示さず、渋い味を好んだりします。偏食の形は子どもそれぞれ。周りと違ってもおかしいことではないです。
寄せ方①:食材ではなく「味と食感」を見る
ぽんたを見ていて気づいたのは、何の食材かよりも味付けと食感で食べられるかが決まるということです。
味のついていないものは苦手でも、同じ食材にしっかり味がついていれば食べられることがあります。食感なら硬い・パリパリしたものより、やわらかくしっとりしたもののほうが食べやすそうです。
苦手な食材をあきらめる前に味と形を変えて出してみる。これがわが家でいちばん効果のあった寄せ方です。
歯科衛生士として補足
硬いものが苦手な子のなかには、感覚の過敏さに加えて噛む力や口の動かし方がまだ育ちきっていないケースがあります。敏感な子にとってガリッとした食感は痛みに近い刺激になることもあります。
やわらかいものから少しずつ広げていけば大丈夫です。気になる場合はかかりつけの歯医者さんで噛む機能について相談できます。
口のケアについてはこちらの記事にまとめています。

寄せ方②:環境の力を借りる
ぽんたは放課後等デイサービスのお昼を、家では考えられないくらいしっかり食べてきます。牛乳が苦手でしたが、先生が本人に合う声かけを見つけてくださって、無理強いなしで少し飲めるようになりました。
家との違いに最初は驚きましたが、周りの子の様子や場の雰囲気など料理以外の要素で食べられるかどうかは変わるものなんですね。
ここから学んだ寄せ方は2つ。デイや学校で食べられたものは家でも出してみること。家で食べない日があっても料理のせいだと結論づけないことです。
寄せ方③:好きなものを入口にする
ぽんたは麺類が大好きです。なので麺に他の食材を少し混ぜて様子を見るという形で、食べられるものを広げてきました。
一口も食べない日は食卓に並べるだけでOKにしています。無理に食べさせない。これも立派な寄せ方だと思っています。
実際ぽんたの食べられるものは少しずつ増えています。去年ダメだったものが今年は食べられたりする。逆もありますが、長い目で見れば前に進んでいます。
栄養が心配になったら
毎食の栄養バランスで考えると苦しくなります。わたしは健診や身体測定で成長が確認できていて本人が元気なら、まずOKと考えるようにしています。
それでも心配なら小児科の先生、学校やデイの先生、自治体の栄養相談など相談できる場所があります。偏食はよくある相談ごとなので遠慮はいりません。
まとめ:苦手はそのまま、寄せていく
この記事の結論をもう一度。偏食はなおすものではなく、食べられる形に寄せるものです。
- 偏食には感覚の特性が関係している。料理の腕の問題ではない
- 寄せ方①:食材ではなく味と食感を見る。味と形を変えて出してみる
- 寄せ方②:環境の力を借りる。外で食べられたものを家でも試す
- 寄せ方③:好きなものを入口に、無理はしない
- 栄養は成長と元気で見る。心配なら相談できる場所がある
食べられるものが今日もいくつかあればそれで十分。同じ場所で悩んでいる方の夕食の時間がすこし優しくなりますように。

