毎晩の歯磨きが親子のバトルになっていませんか。押さえつけて磨くたびに、こんなに嫌がることを続けていいのかなと胸が痛みますよね。
わたしは歯科衛生士として働きながら、重度知的障害・自閉症の息子ぽんたを育てています。ぽんたも歯磨きが大の苦手で、小さい頃は毎晩泣き喚いていました。仕事では毎日人の口の中を見ているのに、わが子の仕上げ磨きには本当に苦労してきました。
この記事では、自閉症の子が歯磨きを嫌がる理由と、わが家で効果のあった仕上げ磨きの工夫、歯科衛生士として伝えたいコツをまとめました。今夜の歯磨きから使えるヒントが見つかるはずです。
結論:嫌がるのはわがままではなく感覚の問題
まず結論からお伝えします。自閉症の子が歯磨きを嫌がるのは、しつけの失敗でも、わがままでもありません。感覚の問題です。
自閉症の子には、口の中の感覚が人より敏感な子が多くいます。歯ブラシの毛先が当たる刺激を、痛みに近いものとして感じている可能性があるんです。加えて、いつ終わるのかわからない不安も重なります。
つまり本人にとって歯磨きは、痛くて、終わりの見えない時間。嫌がるのは当然の反応なんですよね。
だから目指すゴールは、嫌がらずに磨かせてくれることではなく、嫌がっても続けられる形を見つけることです。わが家がたどり着いた形を、このあと紹介します。

うちも毎晩押さえつけて磨いています。このままでいいのか不安で…

わが家も長い間そうでした。まずは嫌がる理由から一緒に見ていきましょう
わが家の歯磨きバトルの歴史
ぽんたの歯磨きの嫌がり方は、成長とともに変わってきました。
小さい頃は、歯ブラシを見せただけで泣き喚くタイプでした。体をよじって逃げるので、磨くというより格闘に近い毎晩でした。
大きくなってきた今は、泣き喚くことは減った代わりに、口をなかなか開けてくれません。口を真一文字に結んで、静かな抵抗をしてきます。
そして一番の後悔は、あまりに嫌がるので磨くのを諦めてしまった時期があることです。その結果、ぽんたには虫歯ができてしまいました。歯科衛生士なのに、です。このときの話は別の記事に詳しく書いています。

この経験があるから言えます。嫌がっても、形を変えてでも、仕上げ磨きは続ける価値があります。
わが家の工夫:寝転んでスマホを見せながら磨く
今のわが家の仕上げ磨きは、ぽんたを寝転ばせて、スマホで好きな動画を見せながら磨くスタイルです。
歯科衛生士としては、ながら磨きを推奨はしません。それでも、押さえつけて格闘するより、リラックスした姿勢で口を開けてくれる方が、結果としてしっかり磨けるんです。
動画に集中している間は口の力が抜けるので、奥歯まで歯ブラシが届きます。磨き残しが減って、泣かせることもない。完璧な方法ではないけれど、わが家にとっては続けられる形でした。
理想の歯磨き習慣より、続けられる歯磨き習慣。育児の現実の中では、これで十分だと思っています。
歯科衛生士として伝えたいコツ3つ
ここからは、仕事で保護者の方にもお伝えしている、家庭でできるコツを紹介します。
①とにかく優しい力で磨く
嫌がる子ほど、つい力が入ってしまいがちです。でも歯ブラシは軽い力で小刻みに動かすのが基本。強い力は歯ぐきに痛みを与えて、歯磨き嫌いをさらに強くしてしまいます。毛先が軽くしなる程度の力で十分汚れは落ちます。
②フロスを毎日の習慣にする
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れは半分ほどしか落とせません。わが家はフロスを毎日使っています。虫歯は歯と歯の間からできることがとても多いからです。
嫌がる子には、まず1日1か所からでも大丈夫。持ち手つきのフロス(フロスピック)なら短時間で済みます。
③奥歯が生えてきたら、横から歯ブラシを入れる
6歳臼歯と呼ばれる奥歯は、生えている途中の時期が一番虫歯になりやすい歯です。手前の歯より背が低いので、正面から磨くと歯ブラシが届きません。
コツは、頬の横から歯ブラシを差し込んで、噛む面に毛先を直角に当てること。生えかけの奥歯を見つけたら、ここだけは意識して磨いてあげてください。
仕上げ磨きだけで守りきれない分は、プロを頼る
家庭での歯磨きを毎日完璧にやるのは、どんな家でも無理があります。ましてや嫌がる子ならなおさらです。
だからこそ、歯科医院での定期健診とフッ素塗布をセットで考えてください。数か月に一度プロがチェックしてくれる安心感があると、家での歯磨きの肩の力も抜けます。
障害のある子の歯科受診の工夫は、こちらの記事にまとめています。

わが家で使っている道具
記事に出てきた道具について、実際にわが家で使っているものを紹介します。どれも歯科医院で扱われている定番で、市販品との一番の違いは毛のやわらかさと糸の質です。
仕上げ磨き用歯ブラシ(ライオンのこども用)
ヘッドが小さく毛がやわらかいので、感覚が敏感な子にも刺激が少なめです。優しい力で磨くコツとの相性もいいですよ。
ワンタフトブラシ(プラウト)
生えかけの奥歯や凹凸のある歯並びに、毛先をピンポイントで当てられる小さな歯ブラシです。横から差し込む磨き方がぐっとやりやすくなります。
フロアフロス(オーラルケア)
唾液を含むと糸がふわっと広がるフロスで、歯ぐきに当たっても痛くなりにくいのが特徴。フロスを嫌がる子にこそ試してほしい一品です。
まとめ:完璧じゃなくていい、続けられる形を
この記事のポイントをまとめます。
- 歯磨きを嫌がるのは感覚の問題。しつけやわがままのせいではない
- 目指すのは嫌がらない歯磨きではなく、続けられる歯磨き
- わが家は寝転び+動画のながら磨きで落ち着いた
- 力は優しく、フロスは毎日、生えかけの奥歯は横からアプローチ
- 家庭で守りきれない分は定期健診とフッ素で補う
わたしは息子の虫歯を一度作ってしまった歯科衛生士です。だからこそ、完璧を目指して疲れ果てるより、細く長く続けることの大切さを伝えたいです。
今夜の仕上げ磨きが、少しでも穏やかな時間になりますように。

