気づくと、口が開いている。テレビを見ているときも、ぼんやりしているときも、ぽかんと開いたまま。
ぽんたもそうです。声をかけるとその場では閉じてくれますが、しばらくすると、またすっと開いています。
口が開いているだけ。そう思っていたのですが、この状態には名前があります。口呼吸です。鼻ではなく口で息をしている状態で、口の中には確実に影響が出ます。
歯科衛生士として働いていると、口呼吸の患者さんの口の中は、見ればわかります。虫歯も歯ぐきの病気も多くて、汚れが残りやすい。同じように磨いていても、差がついていきます。
この記事では、家で気づけるサインと、指示が通らない子でもできることをまとめます。先にお伝えしておくと、口を閉じなさいと言い続ける方法ではありません。
口がいつも開いているのは、口呼吸のサインかもしれません
結論からお伝えします。口がぽかんと開いたままの子は、鼻ではなく口で息をしていることが多いです。これを口呼吸といいます。
知っておいてほしいのは、これが直しようのない癖ではないということ。ちゃんと原因があって、打てる手もあります。歯科でも相談できます。
まずは、うちの子はどうだろう、というところから見ていきましょう。
家で気づけるサイン
今日の様子を思い出しながら、当てはまるものを数えてみてください。
- 気づくと口が開いている。声をかけると閉じるが、またすぐ開く
- 寝ているときにいびきをかく
- 朝起きたとき、口のにおいが強い
- 唇がいつも乾いている、皮がむける
- くちゃくちゃ音を立てて食べる
- 飲み込むのに時間がかかる
- 上の前歯のまわりの歯ぐきが赤く腫れている
わが家は、上のいくつかが当てはまります。いびきはたまにですが、朝はにおいます。

口が開いているのは癖だと思っていました。声をかければ閉じるので、そのうち直るかなと

声をかけて閉じるなら、閉じる力はあるということです。ただ、続かないなら別の理由が隠れていることがあります
上の前歯まわりの歯ぐきは、口が開いていると空気にさらされ続けて乾きます。歯ぐきが乾くと炎症が出やすくなるので、ここが赤いかどうかは家でも見やすい目印です。
なぜ子どもの口が開いたままになるのか
原因はひとつではありません。よくあるものを4つ挙げます。
唇と舌の力が足りない
口を閉じ続けるには、唇と舌の力が要ります。ここが弱いと、意識しているあいだは閉じられても、気が抜けたとたんに開きます。
声をかけて閉じるのに続かないのは、これが大きいのだろうと見ています。閉じる力がないのではなく、閉じ続ける力が足りていない。だから注意しても直りません。注意で増える力ではないからです。
鼻がつまっている
鼻が通っていなければ、口で息をするしかありません。この場合、口を閉じさせるのは苦しいだけです。
多いのは、鼻炎と、のどの奥のふくらみです。鼻の突き当たりにアデノイドと呼ばれる部分があって、ここが大きいと空気の通り道が狭くなります。いびきや、寝ているときに息が止まる原因にもなります。
姿勢が崩れている
あごが上がると、それだけで口は開きます。椅子に浅く座って背もたれに寄りかかる、足が床につかずぶらぶらしている。そんなときの口元を、一度見てみてください。
お薬で口が乾いている
神経に働くお薬には、唾液を減らす作用を持つものがあります。口が乾くと、余計に口を開けたくなります。
こちらは口呼吸とは別の道すじで口が乾く話なので、別記事にまとめています。お薬を飲んでいるお子さんは、あわせて読んでみてください。

口呼吸を放っておくとどうなるか
歯科衛生士として困るのは、ここから先です。
口の中は、唾液が守っています。汚れを流し、歯が溶けるのを防いでくれる。口が開いていると、その唾液が乾きます。守りのない状態で、一日を過ごすことになります。
仕事で見てきた範囲でも、口呼吸の方の口の中は汚れが残りやすく、虫歯も歯ぐきの炎症も見つかりやすいです。磨き方が悪いというより、条件が違う。同じ手入れでも結果が変わってきます。
そのほかに知られている影響もあります。
- 前歯のまわりの歯ぐきが腫れやすい
- 口臭が出やすい
- 舌の位置が下がって、歯並びやあごの形に影響することがある
- のどが乾燥して、感染を起こしやすくなる
どれも、今日明日で起こることではありません。だからこそ、気づいた時点で手を打てるかどうかが分かれ目になります。
家でできること5つ
ここからが本題です。号令をかけずにできることを、順番に並べます。順番に意味があるので、①から読んでください。
① まず、鼻がつまっていないかを疑う
いちばん最初にこれです。鼻が通っていない子に口を閉じさせるのは、息を止めさせているのと変わりません。
見るところは、いびき、寝ているときに息が苦しそう、日中の鼻づまり、鼻をよくすする、あたりです。当てはまるなら、口の練習より先に耳鼻科です。
ぽんたは小さいころ、風邪を引くとよく中耳炎になっていました。当時は耳の病気としか思っていませんでしたが、鼻と耳とのどはつながっています。鼻の通りが悪いと、耳にも出ることがある。あのころに鼻のほうも見てもらっていたら、と今は考えています。
鼻炎の治療をするだけで、アデノイドが小さくなることもあります。すぐ手術という話ではないので、こわがらずに一度みてもらってください。
② 姿勢を整える
足の裏が床につく高さの椅子にする。これだけで、あごの上がり方が変わります。
食事のときは特に見てみてください。足がぶらぶらしていると体が安定せず、あごが上を向きます。踏み台を入れる、クッションで座面の高さを合わせる。道具を買わなくてもできる範囲があります。
③ 吹く遊びを日課にする
唇と舌の力は、練習では増えません。遊びでなら増えます。
シャボン玉、吹き戻し、ラッパ、ストローでピンポン玉を転がす。どれも吹く動きです。1日1分でも、続くほうが勝ちです。
ただ、ここでひとつお伝えしたいことがあります。吹けない子がいます。
ぽんたにシャボン玉をやらせてあげたときも、吹かずに吸ってしまいました。本人はびっくりしますし、こちらも慌てます。そうなると次から嫌がるようになって、続きません。
シャボン玉の液は飲むためのものではないので、吸ってしまう子にいきなり持たせるのは、実は少し心配な遊びでもあります。
もし同じようなら、吹く前の段階から始めてみてください。
- 手のひらに息を当てて、ふーっと吹く形をつくる
- ティッシュを1枚たらして、息で揺らして遊ぶ
- ストローで水をぶくぶくさせる
いちばん勧めたいのは、ストローのぶくぶくです。吸ってしまっても水なので、シャボン液のような心配がありません。失敗にならないぶん、本人も怖がりません。
わが家はお風呂で試しました。湯船なら濡れても気にならないので、気楽にできます。ここから入って、吹く動きが出てきたらシャボン玉に戻す。順番を変えるだけで、続くことがあります。

うちも吹くのが苦手で、シャボン玉は早々にあきらめました

あきらめなくて大丈夫です。吹けないのではなく、吹く前の段階にいるだけかもしれません
④ よく噛める食事に寄せる
噛む回数が増えると、口のまわりの筋肉が使われます。唾液も出ます。
やわらかいものばかりになっていないか、一度献立を見てみてください。少しかたさを足す、大きめに切る。無理のない範囲で構いません。食べること自体が難しいお子さんは、ここは飛ばしてください。
⑤ 乾いた口を守るケアを足す
①から④が効いてくるまでには時間がかかります。そのあいだ、乾いている口を守る手当ては別に必要です。
具体的には、フッ素を続けることと、保湿です。うがいができなくても、フッ素は使い方があります。

毎日の仕上げ磨きが難しい場合は、こちらもどうぞ。

口を閉じるテープは使っていいのか
口呼吸の対策として、寝るときに唇をテープでとめる方法が紹介されることがあります。市販もされています。
わたしは、障害のあるお子さんには安易に勧めません。理由は3つです。
- 鼻がつまったとき、自分でテープを外せるか
- 吐いたとき、自分で外せるか
- 苦しいと伝えられるか
このどれかが難しいなら、使う前に主治医に確認してください。使ってはいけないと言い切るつもりはありません。ただ、健常のお子さん向けに書かれた説明をそのまま持ってくると危ないところがある、ということです。
そもそも、鼻がつまっているせいで口が開いている子にテープを貼っても、原因はそのままです。①に戻ってください。
受診の目安と、どこにかかるか
家でできることを続けても変わらないとき、または次のようなときは相談してください。
耳鼻科へ
- いびきをかく、寝ているときに息が止まるように見える
- 鼻づまりが続いている
- 口を閉じると苦しそうにする
歯科・小児歯科へ
- 虫歯や歯ぐきの腫れが増えてきた
- 歯並びやあごの形が気になる
- 口が閉じないこと自体を相談したい
3つめについて、ひとつ言葉を覚えておくと便利です。歯科では、口が閉じない状態を口唇閉鎖不全と呼びます。口腔機能発達不全症という診断のひとつで、3歳以降なら保険の中で相談できます。窓口でこの言葉を出すと、話が早く進みます。
順番としては、鼻の症状があるなら耳鼻科が先です。鼻が通っていない状態で口の練習を始めても、成果が出にくいためです。
歯科の受診そのものが大変という場合は、こちらにまとめています。

まとめ
- 口がぽかんと開いたままなのは口呼吸のサイン。直しようのない癖ではなく、相談先がある
- 家で見るのは、いびき・朝の口のにおい・唇の乾き・上の前歯まわりの歯ぐきの色
- 原因は、唇と舌の力・鼻づまり・姿勢・お薬の4つがよくある
- 口が乾くと唾液の守る力が働かず、虫歯も歯ぐきの炎症も増えやすい
- 家でできることは、鼻を疑う・姿勢・吹く遊び・噛む食事・乾燥対策の5つ。順番は鼻が先
- 吹けない子は、ストローのぶくぶくから始めると続きやすい
- 口を閉じるテープは、自分で外せない子には勧めない。使う前に主治医へ
注意して直る癖ではありません。ただ、口が閉じる方向に近づける方法はあります。今日できることから、ひとつずつ足していきましょう。
この記事は、歯科衛生士としての知識と家庭でのケアの経験をもとに書いた一般的な情報です。診断や治療に代わるものではありません。気になる症状があるときは、主治医・耳鼻科・歯科にご相談ください。

