PR

障害児の歯科受診、当日の工夫と診察室での声かけ【歯科衛生士ママの試行錯誤】

歯科・お口のこと
記事内に広告が含まれています。

障害のある子どもを歯医者に連れていくのは、本当に大変ですよね。

予約の日が近づくだけで親のほうが憂うつになったり、そもそも診てもらえるのか不安だったり。連れていけないまま虫歯が心配になっている方も多いと思います。

うちの息子ぽんた(重度知的障害・自閉症)は、歯医者の近くの道を通るだけで顔色が変わります。当日の朝に今日は歯医者だと伝えると、テンションが急降下して吐いてしまうことも。

私は歯科衛生士として、診察室で障害のあるお子さんをお迎えする側でもあります。それでも、わが子の受診は毎回しんどいです。

この記事では、親としてやっている当日の工夫と準備に加えて、歯科衛生士として診察室で実際にやっている声かけの工夫、そして今うちがたどり着いた受診のかたちをご紹介します。完璧な方法ではないけれど、一つでもヒントになれば嬉しいです。

私が親としてやっていること2つ

① 告知は当日の朝、一言だけ

「今日、歯医者行くよ」と短く伝えるだけにしています。

自閉症の子には絵カードなどで早めに繰り返し予定を伝えるのが大事って聞いたけど、と思った方、その通りです。事前の見通しを立てる支援は基本のセオリーで、それでうまくいくお子さんもたくさんいます。まだ歯医者への印象が固まっていない子なら、まず試す価値があります。

ただ、ぽんたの場合は逆効果でした。歯医者がどんな場所か、もう完全にわかっているからです。早く伝えれば伝えるほど、不安を抱える時間が長くなるだけ。前日に伝えて一晩中不安にさせるより、当日の朝に一言。見通しを立てないのではなく、不安の時間を最短にするための選択です。

向かう途中にも、歯医者の近くで、ここが今日行く歯医者さんだよ、と一声かけます。突然知らない場所に連れ込まれた、と感じさせないためです。

どちらが合うかはお子さんによって違うので、両方試してわが子の反応で決めてあげてください。

② 終わったら、好きな外食に連れていく

これが今のところいちばん効いています。

歯医者が終わったら〇〇を食べに行こうね、と事前に伝えておく。ご褒美というより、終わりの見通しを持たせるイメージです。

自閉症の子は、このあとどうなるかわからないことへの不安がとても強いです。歯医者のあとに楽しいことがある、という流れを体で覚えてもらうことで、少しだけ気持ちが落ち着くように感じます。

歯科衛生士として、診察室でやっている工夫

ここからは立場を変えて、私が診察室でお子さんをお迎えするときに実際にやっていることをご紹介します。歯医者さんの中の人が何を考えているかがわかると、少し安心材料になるかもしれません。

器具は、見せて・触ってもらってから使う

いきなりお口に器具を入れることはしません。まず、これを使うよと見せて、ブラシなど危なくないものは実際に手で触ってもらってから使います。

実はこれ、歯科の世界でTell-Show-Do法(TSD法)と呼ばれている方法です。説明して(Tell)、見せて(Show)、その通りにやる(Do)。知らないものへの不安や恐怖を減らすための、小児歯科や障害者歯科で広く使われている基本の手法です。

おうちの仕上げ磨きでも応用できます。歯ブラシをいきなりお口に入れるのではなく、見せて、触らせて、それから磨く。遠回りに見えて、結局いちばんの近道だったりします。

10数えるまで頑張ろう、無理なら数を減らす

苦手なことをするときは「10数えるまで頑張ろうね」と声をかけます。本人が無理そうなら、じゃあ5まで、と少しずつ数字を下げていきます。

いつ終わるかわからないことが、いちばんの恐怖です。数を数えることで終わりが見えるようにする。これもカウント法という名前のついた、れっきとした歯科の行動療法のひとつです。

大事なのは、数え終わったら本当にやめること。10と言ったのにまだやっている、と感じさせることが一度でもあると、信頼はあっという間に崩れます。

仕上げ磨きを嫌がる子について、思うこと

読者さん
読者さん

仕上げ磨きを嫌がって、毎晩格闘です…。私のやり方が悪いんでしょうか?

同じようなご相談、本当によくいただきます。

歯科衛生士の私にも、これをやれば必ずうまくいくという答えはありません。個人差がとても大きいからです。

でも、答えがないということは、親のやり方が悪いからできないわけではない、ということでもあります。できる子は小さい頃からすんなりできる。それは親の頑張りの差ではなく、その子の特性の差です。

ひとつ可能性として思うのは、磨く力が強くて痛いのかもしれない、ということ。仕上げ磨きは思っているよりずっと軽い力で十分です。鉛筆を持つように歯ブラシを持って、毛先が軽く触れる程度。もし力いっぱい磨いているなら、まずそこを見直してみてください。

それでも嫌がるなら、それはお子さんの特性であって、親御さんのせいではありません。うちの子は嫌がる子なんだと認めたうえで、押さえてでも最低限磨く日があっていい。私はそう思っています。

仕上げ磨きの具体的な工夫は、こちらの記事で詳しくまとめています。

自閉症の子が歯磨きを嫌がるとき、どうする?【歯科衛生士ママがわが家でやっていること】
自閉症の子が歯磨きを嫌がるのは、わがままではなく感覚の問題です。重度知的障害・自閉症の息子を育てる歯科衛生士ママが、わが家で続けている仕上げ磨きの工夫と、プロとして伝えたいコツをまとめました。

結局、当日は抑制になる

どんなに準備しても、治療中は体を押さえてもらうしかない場面があります。

泣いていても、怖がっていても、治さなければならない。それが一番つらいところです。押さえられながら治療を受けるわが子を見るのは、毎回胸が痛いです。

発達障害があっても絵カード等で見通しを立ててあげて、根気強く通院し訓練すれば、抑制する必要がない場合もあります。

体が大きくなると、押さえるのも限界が来る

ぽんたの場合、成長するにつれて大人が手で押さえる方法は通用しなくなってきました。

大学病院などにはレストレイナーという、ネット状の固定具で体を包んで安全に治療する方法もあるそうです。うちはまだ使ったことがないので体験談は書けませんが、手で押さえるのが無理になったら終わり、ではないということは知っておいてほしいです。

体が大きくなったら、障害者歯科へ

ぽんたの抑制での治療が難しくなってきたタイミングで、かかりつけの歯科医に相談して障害者歯科のある病院を紹介してもらいました。

読者さん
読者さん

障害者歯科って、どうやって探せばいいんですか?

ハル
ハル

探し方は主に3つあります。特徴と一緒にご紹介しますね。

探し方ポイント
①かかりつけの歯科医に紹介してもらういちばん確実。これまでの治療の経過も伝えてもらえます
②日本障害者歯科学会の認定医・専門医を探すページで検索都道府県別に、認定医のいる歯科医院・病院・口腔保健センターを探せます
③お住まいの地域名+障害者歯科で検索通える範囲にどんな選択肢があるか、ざっと把握できます

どの方法で探した場合も、受診前に必ず電話で、お子さんの状態を伝えておいてください。受け入れ体制は医院によって差があるので、事前の確認がお互いのためになります。

何を伝えるかは、お子さんによって違います。診断名だけでなく、その子の特性を具体的に伝えるのがポイントです。当てはまるものだけで大丈夫なので、次のような内容をメモしてから電話すると落ち着いて話せます。

  • 診断名や障害の程度
  • 言葉でのやりとりがどのくらいできるか
  • 音や光、体に触れられることへの過敏さがあるか
  • パニックになりやすい場面と、落ち着ける方法
  • これまでの歯科受診でできたこと・難しかったこと
  • 待合室で待つのが難しい場合は、その旨(車での待機ができるかなど)

初診は検査だけから始まった

障害者歯科に初めて行ったとき、いきなり治療はありませんでした。まず、全身麻酔に耐えられる体かどうかを確認するための検査だけです。

この検査自体も、静脈麻酔で眠った状態で受けます。

全身麻酔と静脈麻酔のちがい(ざっくり)
・全身麻酔:完全に眠った状態にする麻酔。呼吸も機械でサポートしながら、時間のかかる治療をまとめて行えます
・静脈麻酔:点滴から薬を入れて、うとうと眠ったような状態にする麻酔。呼吸は自分でできて、短時間の検査や処置で使われます
どちらも麻酔科の先生の管理のもとで行われます。

検査が終わっても、なかなか目を覚ましませんでした。1時間ほど待機してようやく意識が戻りました。

初めての障害者歯科受診を考えている方へ。最初は治療ではなく検査からが多い、と知っておくだけで、少し心の準備ができると思います。

今は、全身麻酔で治療しています

検査をクリアして、今は全身麻酔をかけて眠っている間に治療をしてもらっています。

本人は気づかないうちに終わる。受診中に怖い思いをしなくていい。それは、ぽんたにとって大きなことだと思っています。

私は歯科衛生士ですが、ずっと一般の歯科医院で働いてきたので、全身麻酔での治療は私にとっても未知の世界でした。同業でも、怖いものは怖い。それでも担当のドクターがリスクも含めて丁寧に説明してくださって、少しずつ、この方法でいこうと思えるようになりました。

わからないことは遠慮せずに質問して大丈夫です。納得できるまで説明してもらうことは、親の権利だと思います。

知らなくてショックだったこと:治療後の鼻血

ひとつ、私が事前に知らなくてショックだったことを書いておきます。

治療が終わったあと、ぽんたの鼻から血が出ていたんです。

歯科の全身麻酔ではお口の中で治療をするため、呼吸のための管を鼻から通します。その刺激で治療後に鼻血が出ることがあるそうです。少量なら自然に止まるものとはいえ、何も知らずにわが子の鼻血を見たときは本当に心臓が縮みました。

これから全身麻酔での治療を考えている方は、鼻血が出ることがあると頭の片隅に置いておいてください。知っているだけで、あの瞬間の動揺がだいぶ違うと思います。

眠らせて治してもらえるという安心感と、麻酔への不安は、今でも毎回同時にあります。それでも今のところ、これがぽんたにとっていちばん負担の少ない方法だと感じています。

日頃の口腔ケアについては、こちらの記事もあわせてどうぞ。

歯科衛生士の私が、息子の虫歯を防げなかった話【重度知的障害児の口腔ケア】
「歯科衛生士なのに息子の虫歯を防げなかった」という後悔から学んだこと。重度知的障害・自閉症の子の口腔ケアのリアルを包み隠さずお伝えします。全身麻酔での治療や歯科トラウマ、今実践しているケア方法まで。

よくある質問(費用や麻酔、受け入れのこと)

障害者歯科の費用は高い?

一般の歯科と同じく、基本は保険診療です。全身麻酔での歯科治療も、多くの場合は保険が適用されます。さらに、自治体の障害児・障害者向けの医療費助成の対象になる場合もあります。制度の内容は自治体によって違うので、受診先の病院とお住まいの自治体の窓口で確認してみてください。

全身麻酔は安全?

リスクがゼロとは言えません。だからこそ事前に全身の検査があり、麻酔科の管理のもとで行われます。私も同業なのに怖かったので、怖いと感じるのは自然なことです。不安なことは遠慮なく質問して、納得してから決めて大丈夫です。

何歳から障害者歯科に行ける?

年齢の決まりは特にありません。小さいうちから通うこともできますし、うちのように一般の歯科での治療が難しくなってから移る形でも大丈夫です。迷ったら、かかりつけ医や地域の口腔保健センターに相談してみてください。

診察室で暴れてしまう子でも診てもらえる?

診てもらえます。障害者歯科は、そういうお子さんのための場所です。ただし設備や体制は医院ごとに違うので、事前の電話でお子さんの状態を伝えて、対応できるか確認してから受診すると安心です。

まとめ(ぽんたの場合)

  • 告知は当日の朝、シンプルに一言+道中でここだよと一声(早めの予告が合う子もいる。わが子の反応で決める)
  • 終わったご褒美(好きな外食)で終わりの見通しを持たせる
  • 診察室では見せて・触ってもらってから(TSD法)と、10数える(カウント法)
  • 仕上げ磨きは特性の差が大きい。できなくても親のせいではない。まずは磨く力の見直しから
  • 抑制が難しくなったら、かかりつけ医に障害者歯科を紹介してもらう(学会の認定医検索も使える)
  • 受診前の電話では、診断名だけでなくわが子の特性を具体的に伝える
  • 費用は基本的に保険診療。自治体の医療費助成が使える場合もある
  • 障害者歯科での初診は治療ではなく、全身麻酔が可能かどうかの検査から始まる
  • 全身麻酔という方法もある(リスクはあるが、本人の負担は大きく減る)
  • 全身麻酔のあとは鼻血が出ることがある。知っておくと慌てない

同じように悩んでいる方へ、うちもまだ試行錯誤中ですが、一緒に乗り越えていきましょう。

アバター画像

歯科衛生士のシングルマザー「ハル」です。重度知的障害・自閉症の息子ぽんたを育てながら日々奮闘中。福祉制度や療育のこと、障害児育児のリアルをお届けします。

ハルをフォローする
歯科・お口のこと
シェアする
タイトルとURLをコピーしました