障害のある子の歯みがき、うまくできていますか?
「暴れて仕上げみがきができない」「歯科に連れて行けない」「どうやってケアすればいいかわからない」。そんな悩みを抱えている親御さんは、きっと多いと思います。
わたしもそのひとりでした。
歯科衛生士として働いているのに、息子・ぽんたの虫歯を防げませんでした。乳歯がそろう頃にはもう虫歯があって、最終的には全身麻酔で治療をすることになりました。
「専門家なのに」と思うかもしれません。でも、知識があっても、余裕がなければ使えない。それが障害児を育てる親の現実だと、身をもって知りました。
この記事では、失敗した経験を正直に書きます。同じ後悔をしてほしくないから。そして、歯科衛生士として「こうすればよかった」と思うことも、一緒にお伝えします。
ぽんたの歯がどうなったか
ぽんたは重度の知的障害と自閉症があります。小さい頃から感覚過敏もあって歯みがきが大嫌いで、乳歯が生えそろう頃には、もう虫歯になってしまっていました。
歯科医院にも連れて行きましたが、診察台に座ることすらできず、抑えて処置しようとしたことで、歯科そのものへの恐怖が強くなってしまいました。それ以来、歯科医院に近づくことも難しい状態が続きました。
結果的に、全身麻酔下で治療をすることになりました。
処置を終えたぽんたを見て、「かわいそうなことをした」と思いました。こうなる前に、もっとできることがあったはずだと。
なぜ防げなかったか——後悔していること
夜泣きがひどくて、赤ちゃん用のスポーツ飲料を哺乳瓶で飲ませていた
ぽんたは小さい頃から眠りが浅い子で夜泣きや夜驚症がひどく、なんとか落ち着かせようとして赤ちゃん用のスポーツ飲料(イオン飲料)を哺乳瓶に入れて飲ませていました。あと偏食もあって食事中や普段から、水やお茶を飲まず野菜ジュースばかりを好んで飲んでいました。
これが、虫歯の大きな原因になったと思っています。
イオン飲料は糖分を含んでいます。哺乳瓶で飲むと、歯の表面に糖分が長時間触れた状態になります。歯科衛生士として「してはいけない」と知っていたのに、余裕がなくて、やってしまいました。毎晩泣き続ける子を前にして、「今夜をなんとか乗り越えること」が最優先でした。
歯みがきを嫌がるから、力ずくで抑えていた
歯みがきについても、毎朝毎晩泣いて暴れて嫌がっていました。それでも「やらないわけにはいかない」と思って、抑えながら歯みがきをしていました。
いろんなグッズを試しましたが、自ら口を開けてちゃんと歯みがきさせてくれることはぽんたはなかったです。わたしもぽんたも歯磨きの時間がすごくストレスになっていたと思います。
歯科で抑えて処置したことで、恐怖が固まった
最初に連れて行った歯科で、抑制して処置をしました。当時は「仕方ない」と思っていましたが、それ以来ぽんたの歯科への恐怖は決定的になりました。歯科医院に近づくだけで拒否するようになり、早期に治療できるタイミングを逃してしまいました。発達障害がある子は嫌な記憶や恐怖は特に記憶に残りやすいと後から知りました。
歯科衛生士として「早めにやってほしかった」こと
失敗した経験をふまえて、今なら伝えられることをまとめます。
ジュース、イオン飲料、ミルク——これらを寝る前や夜間に与え続けると、虫歯リスクが格段に上がります。どうしても飲み物が必要なときは、水に切り替えることが一番の予防になります。「そんな簡単なことで」と思うかもしれませんが、夜泣きがつらい時期は「それができない」とわたしは知っています。でも、知っていることと知らないことでは違います。
歯ブラシより先に「口に触れること」に慣れる
いきなり歯ブラシを口に入れようとすると、嫌がる子は多いです。まず口の周りを触ること、唇を触ること、歯茎を指で触ることから慣らしていくと、歯ブラシへの抵抗が下がりやすくなります。ガーゼで歯を拭くだけでもいいので、「口に触れること」自体を日常にするのが先です。
フッ素を早めに使う
フッ素入りの歯みがき粉やフッ素ジェルは、虫歯予防に効果があります。歯ブラシが嫌でもフッ素ジェルを歯に塗るだけでも意味があります。乳歯が生えた頃から使い始めるのが理想です。
障害者対応の歯科を早めに探しておく
「障害者歯科」「小児歯科」で障害のある子の診療に慣れた歯科医院は、地域によって異なりますが、大学病院の歯科や障害者歯科専門のクリニックが選択肢になります。虫歯になってから探すのではなく、定期的に慣れていく場所として、早めに見つけておくことをすすめます。急に連れて行っても、お互いにしんどいです。
今、ぽんたの口腔ケアはどうしているか
小学校に入った頃から、ぽんたは歯みがきで暴れることがなくなりました。いつの間にか、です。理由はよくわかりません。慣れたのか、成長したのか。
今は、寝転んだ状態か、立ったまま後ろから支える形で、仕上げみがきをしています。毎回完璧にはできていないし、ちゃんと口を開けてくれない日もあります。それでも続けています。
全身麻酔の治療を経験して、「もうあんな思いはさせたくない」という気持ちが、今の継続の理由になっています。
まとめ——同じ後悔をしてほしくない
歯科衛生士でも、防げませんでした。知識があっても、余裕がなければ使えない。それが現実です。
だから、これを読んでいるあなたが「ちゃんとできていない」と自分を責めていたとしても、それはあなたのせいだけじゃないと思っています。障害のある子を育てながら、口腔ケアを完璧にやり続けるのは、本当に難しいです。
それでも、「夜の飲み物を水にする」「口に触れることを怖くない場所にする」「フッ素を使う」——小さいことから始められることは、あります。
ぽんたのような経験をする子が、ひとりでも少なくなってほしいと思いながら、書きました。
実際の歯科受診でどんな工夫をしているか、障害者歯科や全身麻酔への流れについてはこちらにまとめています。
→ 障害児の歯科受診、当日の工夫と準備【歯科衛生士ママの試行錯誤】

